DRIVER NOTE #09

配達が速い人は、走るのが速いわけじゃない。

初めて行く場所は、今でも時間がかかる

初見の場所は、本当に神経を使う。

マンションひとつでも、確認することがいっぱいある。エントランスはどこなのか。車はどこに停めればいいのか。部屋はどういう並びなのか。ポストはどこなのか。宅配ボックスはあるのか。

こういうのって、地図を見ているだけじゃ分からない。実際に行ってみないと分からないことが多い。

戸建も同じ。玄関がどっちを向いているのか。表札はあるのか。宅配ボックスはあるのか。表札があれば分かりやすいけど、無い家も普通にある。そういうときは隣の家の表札を確認して、地図と照らし合わせたりする。

道もそう。一方通行。行き止まり。車が通れる道幅なのか。そのまま先へ抜けられるのか。

地図上では道になっていても、「いや、ここ軽バンで入るのキツいだろ」みたいな場所もある。

だから知らない場所を配るのは、めちゃくちゃ疲れる。

自分の担当コース200個と、初見のコース50個が同じ給料だと言われたら、自分は200個を選ぶ。

それくらい「知っている」ということは大きい。

いつものコースは、頭の中に全部入っている

担当コースになると、全然違う。

道はもちろん、番地、名前、家の外観、玄関の向き、宅配ボックスの有無。この家は何時くらいなら在宅していることが多いとか、時間指定の特徴とか。

そういう情報が全部、少しずつ頭に入ってくる。

今は荷物の住所と名前を見た瞬間に、「あ、あの家ね」って外観が浮かぶ。そこから宅配ボックスの有無とか、いろんな情報が一緒に出てくる。

頭の中に担当コースのデータベースがある感じ。

新人の頃は、荷物の大きさすら分からなかった

配達の仕事を始めたばかりの頃。たぶん、1日の配完は80個くらいだったと思う。最初の頃は、とりあえず100個を超えることが目標だった。

今考えると当たり前なんだけど、新人の頃って荷物のサイズ感すら分からない。60、80、100、120。数字で言われても、「それ、どれくらいの大きさ?」って感じだった。

だから荷物を探すのにも時間がかかる。「あれ?ない」ってなって、荷台の荷物をひっくり返して探したりしてた。

これが地味にデカい。1回数分でも、それを一日に何十回もやったら、とんでもない時間になる。

今は積み込みの時点で、配達先と荷姿を一致させる。番地やルートも考えて、すぐ取り出せるように積む。住所を見て、「あの家だから、あの荷物」までつながってる。

結局、配達中に荷物を探している時間って、何も生んでないんだよね。1個探すのに5分とかかかってたら、配達なんて終わらない。

速く動くというより、探す時間、迷う時間、止まっている時間を減らす。

こっちの方が大事だと思う。

1便は朝一が勝負

自分は、朝一がかなり大事だと思ってる。特に9:30〜10:30くらい。

この時間は指定なしの荷物が近くに固まっていて、置き配できる荷物も多い。だから条件がいい日は、一気に倒す。

この時間だけなら平均50個前後。今までの最高が1時間65個。

もちろん、毎日65個いけるわけじゃない。その日の荷物を見れば、「今日は行けるな」って日もあれば、「今日は無理だな」って日もある。

荷物の種類も違うし、時間指定も違うし、並びも違う。だから単純に個数だけでは決まらない。

でも、行ける日は朝一でどれだけ倒せるか。自分の中では、最初の1時間が1便攻略の核。ここでかなり変わる。

慣れると「いつもと違う」に気づく

担当コースを覚えると速くなる。でも、それだけじゃない。

いつも見ているから、違和感に気づける。これもかなり大事。

たとえばマンションへの置き配。前に来たときは普通だったポストが、今日はテープで塞がれている。そうすると、「あれ?転居した?」ってなる。

置き配指定だからといって、そのまま置くわけにはいかない。

配達中に引っ越し作業をしているのを見かけることもある。そういうのも覚えておく。次にその家の荷物が来たとき、「あそこ引っ越ししてたな」って思い出せる。

表札と宛名が違うときもある。同居しているのかもしれない。住所が間違っているのかもしれない。でも、こっちには分からない。

分からないものを、「たぶん大丈夫でしょ」で置くのは怖い。そういう荷物は持ち戻って、調査に回す。

自分の中では、誤配が一番御法度。

どんなに速く配っても、誤配したら意味がない。しかも誤配すると、結局自分が大変になる。忙しくても回収しに行って、正しいところへ届け直して、謝罪しなきゃいけない。信用も落とす。

完全に自分で自分を苦しめるミス。

速くても、雑だったらダメ。
速くても、間違えたらダメ。

「いつものお兄さん」

あと、自分は接客も結構大事にしてる。

基本的に荷物を渡すときは、笑顔。別に特別な接客をしているわけじゃない。普通に挨拶して、笑顔で荷物を渡す。

でも、毎日同じ地域を走っていると、だんだん顔を覚えてもらえる。「いつものお兄さん」って言われることもある。

配達の仕事って、「ありがとう」って実はそんなに言われない。荷物を持ってきて当然。仕事なんだからやって当然。たぶん、そういう感覚もあると思う。

だからこそ、「いつもありがとう」って言われると、めちゃくちゃ嬉しい。

たまに飲み物とか、差し入れをもらうこともある。これも本当に嬉しい。

顔を覚えてもらうと、置き配について相談されたときにも話がスムーズになることがある。もちろん、荷物の種類や会社のルールを確認するのは前提。生ものや食品を安易に置いたりもしない。

雨の日に置き配するときは、荷物をビニールに入れる。これも別に大したことじゃない。でも、自分がお客さんだったら、雨の中で段ボールをそのまま置かれたら嫌だから。

安心して置き配を選んでもらうための、ちょっとした配慮。

街でいつものお客さんとすれ違ったら挨拶もする。本当に小さいことばかり。

でも、こういう小さな積み重ねが大事なんだと思う。

じゃあ、配達が速い人って何だろう

新人の頃は1日80個くらい。100個を超えるのが最初の目標だった。

今では朝の9:30〜10:30くらいの1時間で平均50個前後。条件が揃えば、1時間で65個配ることもある。

じゃあ、何がそんなに変わったのか。

別に走るのが速くなったわけじゃない。

道を覚えた。家を覚えた。荷物を覚えた。お客さんを覚えた。

荷物を探さなくなった。道に迷わなくなった。そして、「いつもと違う」にも気づけるようになった。

配達が速い人は、迷わずに正確な人。

ただ急いでいる人とは違う。

速くても雑だったらダメ。誤配したらもっとダメ。

毎日同じ街を走って、迷わず、間違えず、ちゃんと届ける。笑顔で渡して、また次に行く。

それを毎日繰り返しているうちに、いつの間にか、「いつものお兄さん」になる。

たぶん配達の速さって、そういう毎日の積み重ねの先にあるものなんだと思う。

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